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事業用資産の買い換え特例
管理者
2023年5月17日
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事業用資産の買い換え特例
特例の概要
◆
一定の事業用資産を譲渡し、一定の事業用資産を買い換えた場合、譲渡所得の80%(原則。都心部以外は75%又は70%)を繰り延べる
【例】①譲渡1億 買換3億 →譲渡所得2,000万(譲渡1億×80%を繰り延べ)
②譲渡3億 買換1億 →譲渡所得2.2億(譲渡3億のうち、買換1億を上限として80%を繰り延べ)
→繰り延べ額は譲渡金額か買換金額のいずれか低い方が上限となる
◆
繰り延べた譲渡所得は買換資産の取得費を控除することで繰り延べを実現させている
【例】①譲渡1億 買換3億 →買換取得費2.2億(買換3億から上記繰り延べた8,000万を控除)
②譲渡3億 買換1億 →買換取得費2,000万(買換1億から上記繰り延べた8,000万を控除)
→このよう取得費を控除することで次の譲渡により、国は税金の取り漏れを防いでいる(仮に①で買換資産を後日3億で譲渡した場合、譲渡3億ー取得費2.2億の差額8,000万が譲渡所得となるため)
要件
◎譲渡資産
(
◆
を全て充足すること)
◆
事業用資産であること
・事業とは?(不動産の場合5棟10室基準など)
→業務規模でも①相当の対価の受領、②継続的に行っている。以上2点の充足で認められる可能性有り
・農地も事業と認められる傾向(
タックスアンサー:No.3402 事業用の資産の範囲
)。但し、農作物を外部へ販売しているなど、事業実態は必要
・使用貸借財産は対象外
・事業を行っていたが廃業した場合など
→廃業後、土地建物を転用することなく直ちに譲渡したのであれば事業性が失われているとはいえず、適用可能性有り(昭和51.1.29名古屋高裁)
◆
所有期間が10年超(譲渡年の1月1日において)
→所有期間が10年以下の場合は都市政策などに併せて譲渡されたものなど諸要件を充たす必要がある
◎買換資産
(
◆
を全て充足すること)
◆
事業用資産であること
◆
資産の取得時期は譲渡年、譲渡年の前年、譲渡年の翌年の3年間うちいずれかであること
・取得日は契約日、引渡日のいずれでも選択可能(所基通36-12。但し、請負契約は引渡日のみ。契約日は認められない)
・翌年までに取得が困難な場合、税務署長の認定によりさらに期間を2年以内の範囲で延長できる。但し、要件は厳しいため注意(
タックスアンサー:No.3423 期限までに買換資産を買えなかったとき(事業⽤資産)
)
◆
買換資産のうちに土地等が含まれる場合
・土地等の上に事業用建物を建築すること(駐車場など土地等のみの取得は一部を除き原則不可)
・土地等の面積は300㎡以上であること
→土地を複数購入する場合の面積判定は「一の取引」において300㎡以上か否かの判定。同一人物から複数の土地を同時に購入する場合は合計面積で判定。違う人物から複数の土地を同時に購入する場合は、人ごとの取引単位で300㎡以上である必要が生じると思われる。
また、分譲マンションなど区分所有不動産の場合は敷地権の面積で判定(「一の取引」において複数購入の場合は合計面積で判定・
国税庁質疑応答事例:買換資産が分譲マンションの複数の専有部分(部屋)である場合の面積要件の判定
)
・土地等の面積が、譲渡した土地等の面積の5倍以内であること。 超える部分は特例の対象外
◆
取得の日から1年以内に事業の用に供すること
→土地等を取得し収益建物を建築する場合、土地等の取得日から原則1年以内に建物を完成させ、事業に供する(収益建物の場合、賃貸開始)こと
尚、措通37-23(1)(イ)により、当該1年以内の要件は建物等の建設着手日から3年以内の建物完成及び事業開始を要件とし、建設着手日を事業供用日としてよいとされている
特例適用の検討について
本特例は建物へ適用することは望ましくない傾向と考えられる。理由は特例の概要でも述べている通り、一時的に譲渡所得は繰り延べられるものの、買換資産の取得費が控除されるためである。
建物へ適用した結果、取得費の控除は減価償却費の減少へ繋がることとなる。仮に納税者の所得税率+住民税率が30%と仮定した場合、譲渡税で20%を一時的に繰り延べ、その後毎年繰り延べた部分に30%の税率が課税されることとなり、税率差の10%は理論上損していることとなる。
本特例はできる限り土地のみへ適用することが望ましいと考えられる。土地は本特例の適用により同様に取得費が控除されるものの、当該取得費の控除は次の譲渡まで繰り延べられ続けるためである。
尚、本特例は後述の通り土地のみの取得では適用を受けることが原則できないため、土地上に事業用建物の存在が必要となる。
但し、本特例は2以上の買換資産を有する場合、どの資産に特例を適用するか任意に選択可能のため、土地のみに本特例を適用することで上記減価償却費の問題は避けることができる傾向にある。
その他
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譲渡年に買換資産を取得しないのであれば、税務署へ別途書類を提出する必要がある(買換資産の先行取得又は取得の見込み書)
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譲渡資産又は買換資産が2以上ある場合、どの資産に特例を適用するかは任意に選択が可能(措通37-19)。例えば買換資産が土地と建物の場合、土地のみに特例適用をするなど選択が可能(区分所有不動産でも敷地権のみに適用することも可能と考えられる)
但し、土地の一部、建物の一部など譲渡資産又は買換資産の一部につき本特例を適用することは認められない(同通達注意書き)
◆
本特例に賃貸割合の概念はない。共同住宅で一部空室の場合でも当該不動産が事業用不動産か否かを判定し、事業用不動産と認められれば全体に適用があると考えられる
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本特例は譲渡年の確定申告期限における期限内申告が要件となり、期限後申告は入院や災害などやむを得ない理由により延長申請が認められた場合を除き適用要件を充たさないこととなる
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買換資産自体をを更に譲渡した時点において、本特例の適用要件を充たしているのであれば、買い換え特例の適用は可能