事業用資産の買い換え特例

事業用資産の買い換え特例

特例の概要

一定の事業用資産を譲渡し、一定の事業用資産を買い換えた場合、譲渡所得の80%(原則。都心部以外は75%又は70%)を繰り延べる
【例】①譲渡1億 買換3億 →譲渡所得2,000万(譲渡1億×80%を繰り延べ)
   ②譲渡3億 買換1億 →譲渡所得2.2億(譲渡3億のうち、買換1億を上限として80%を繰り延べ)
→繰り延べ額は譲渡金額か買換金額のいずれか低い方が上限となる

繰り延べた譲渡所得は買換資産の取得費を控除することで繰り延べを実現させている
【例】①譲渡1億 買換3億 →買換取得費2.2億(買換3億から上記繰り延べた8,000万を控除)
   ②譲渡3億 買換1億 →買換取得費2,000万(買換1億から上記繰り延べた8,000万を控除)
→このよう取得費を控除することで次の譲渡により、国は税金の取り漏れを防いでいる(仮に①で買換資産を後日3億で譲渡した場合、譲渡3億ー取得費2.2億の差額8,000万が譲渡所得となるため)

要件

特例適用の検討について

本特例は建物へ適用することは望ましくない傾向と考えられる。理由は特例の概要でも述べている通り、一時的に譲渡所得は繰り延べられるものの、買換資産の取得費が控除されるためである。
建物へ適用した結果、取得費の控除は減価償却費の減少へ繋がることとなる。仮に納税者の所得税率+住民税率が30%と仮定した場合、譲渡税で20%を一時的に繰り延べ、その後毎年繰り延べた部分に30%の税率が課税されることとなり、税率差の10%は理論上損していることとなる。

本特例はできる限り土地のみへ適用することが望ましいと考えられる。土地は本特例の適用により同様に取得費が控除されるものの、当該取得費の控除は次の譲渡まで繰り延べられ続けるためである。
尚、本特例は後述の通り土地のみの取得では適用を受けることが原則できないため、土地上に事業用建物の存在が必要となる。
但し、本特例は2以上の買換資産を有する場合、どの資産に特例を適用するか任意に選択可能のため、土地のみに本特例を適用することで上記減価償却費の問題は避けることができる傾向にある。

その他

譲渡年に買換資産を取得しないのであれば、税務署へ別途書類を提出する必要がある(買換資産の先行取得又は取得の見込み書)
譲渡資産又は買換資産が2以上ある場合、どの資産に特例を適用するかは任意に選択が可能(措通37-19)。例えば買換資産が土地と建物の場合、土地のみに特例適用をするなど選択が可能(区分所有不動産でも敷地権のみに適用することも可能と考えられる)
但し、土地の一部、建物の一部など譲渡資産又は買換資産の一部につき本特例を適用することは認められない(同通達注意書き)
本特例に賃貸割合の概念はない。共同住宅で一部空室の場合でも当該不動産が事業用不動産か否かを判定し、事業用不動産と認められれば全体に適用があると考えられる
本特例は譲渡年の確定申告期限における期限内申告が要件となり、期限後申告は入院や災害などやむを得ない理由により延長申請が認められた場合を除き適用要件を充たさないこととなる
買換資産自体をを更に譲渡した時点において、本特例の適用要件を充たしているのであれば、買い換え特例の適用は可能